なぜ安倍首相とトランプ政権は「仲良し」でなくてはいけないのか?米外交専門家による解説

トランプ大統領と安倍首相:奇妙なカップル

安倍首相がトランプ大統領との関係に腐心するのには明らかな合理的理由がある

アメリカの外交専門誌The Diplomatに、安倍首相とトランプ大統領の密接な関係はなぜか?という記事が投稿されていたのでご紹介します。
※記事内の強調は管理人によるもの

記事要約:トランプ政権は日本にとって重要な安全保障を損ねる可能性がある

トランプ大統領が日本を訪問する。安倍首相にとって、トランプ大統領との良好な関係を失うわけにはいかない。トランプ大統領は国際関係を純粋に商売的な世界観で見ている。アメリカが日本の自動車に高い関税を課した場合、安倍首相の掲げる経済改革は先行きが怪しくなる。さらにトランプ政権は日本から譲歩を引き出すために、日本の安全保障すら交渉材料にしてしまうかもしれない。つまり日本の安全保障上の利益がかなり損ねられるリスクがある。これを未然に防ぐために、安倍首相はトランプ大統領との関係に腐心しているのだ。

記事本文

今週末に、日本国首相である安倍晋三氏の招待を受けて米国トランプ大統領は東京を訪問し、新たに即位した徳仁天皇の初の海外首脳の国賓となる。このユニークな栄誉は、極めて重要なカウンターパートと個人的な関係性を作り上げるという安倍首相の取り組みを締めくくるものだ。トランプをノーベル賞に推薦したり、金メッキのゴルフクラブを幸せな自由世界のトップにプレゼントすることも、これに含まれている。

そのような日本側の器の大きさに理由がないわけではない。日本は国家安全保障を米国との同盟に頼っている。アメリカからすれば中国が最大の貿易相手国だが、日本にとって見ればアメリカが最大の輸出相手国だからだ。つまりこれは、日本が失うわけにはいかない二国間関係なのだ。

それでもトランプ政権は日本政府に特別な課題を示している。 トランプ政権は就任後すぐに日本に鉄鋼とアルミニウムの関税を課しただけでなく、自動車や他の商品に対する新しい関税の課税を避けるための二国間貿易協議を日本政府に強制した。

日米同盟の戦略的重要性に対するトランプ大統領の不誠実な態度は、さらに差し迫った懸念だ。NATOおよび他の同盟国に関するトランプ大統領の発言は、同盟外交の微妙な性質をほとんど無視した、純粋に商売的な世界観を呈している。 醜い貿易戦争や二国間の首脳の無駄な争いは、日本が依存している、北朝鮮や中国といった差し迫った脅威を防衛するための同盟を危うくする可能性がある。 こうなると突然、金メッキのゴルフクラブはとても理にかなってくるのだ。

そのせいで、誰もが安倍首相とトランプ大統領との関係が本物であるかどうかを推測したがっている。日本のかつての外務大臣の息子と元首相の孫という政治的な血筋と、ニューヨーク市クイーンズからやってきたカジノマンは非常に奇妙なカップルだからだ。トランプは彼の近しい家族以外にはほとんど関心がないため、安倍のチャーミングな攻勢は、本物の友情ではなくより打算的な関係かもしれない。合理的な人々なら考えられる通りだ。

それでも、そんな合理的すぎる考え方は間違っているかもしれない。安倍首相とトランプ大統領の間の親近感は、懐疑論者たちが信じたがるよりも深いらしいのだ。筆者が知る関係者は、安倍首相とトランプ大統領の関係は真実であることを心から私に保証してくれる。トランプ氏が定期的に助言を求める他の世界的なリーダーはそれほど多くはない。トランプ政権による「自由で開かれたインド太平洋」の採択に見られる通り、安倍首相の動きが報われたこともある。これは日本の首相が最初に描いた構想だからだ。

皮肉にも、安倍首相は今のホワイハウスの最高司令官をかつての冷静な前任者であるバラク・オバマ前大統領よりも親切だとみなすかもしれない。実際、トランプ政権を取り巻く疾風怒濤にも関わらず、日本の外交官たちは「何の動きもなかったオバマ」政権のことをそれほど懐かしく思っていない。政界の中心に居合わせることの多い日本の外交エリートたちの公然の秘密、つまり「民主党政権による大統領よりも、共和党政権による大統領の方を好む」ことがこれほどまでに明らかになったことはないだろう。

この偏向の原因はなんだろうか?最初の原罪は、民主党政権の大統領、ビル・クリントンが1998年に中国を9日間訪問し、東京を訪問しなかった「ジャパン・パッシング(日本を素通り)」エピソードだ。日本の保守派にとって、これは左派のアメリカ大統領は一瞬で日本を売り払うだろうという確信を強めるものになった。これは僅かばかりだが日本のエリートたちの集団心理内に刻まれ、後継の民主党政権の大統領たちはこの償いをすることができなかった。

これは実際には、共和党政権下よりも民主党政権下の方が日本にとっておそらくうまくやれていた事実に反している。共和党のニクソン政権は結局のところ、日本政府に全く相談することなく、ドルの金本位制を取りやめて中国との外交関係を樹立する「ニクソン・ショック」をもたらした。同じく共和党のジョージ・W・ブッシュ政権が2008年に北朝鮮をテロ支援国家から外したときは、日本政府の主流派は拉致問題のために北朝鮮を罰する流れからの米国の裏切りとみなした。

それらとは対照的に、オバマ政権は二国間関係において日本政府の取組みを邪魔することはなかった。さらに、おそらく夫のかつての外交上の失策を償うため、ヒラリー・クリントンは国務長官としての最初の海外公式訪問に東京を選んだ。しかしこれは日本政府の民主党政権に対する態度を永続的に変えることはなかった。日本の中国との領土紛争に対するアメリカの関与を保証する声明も彼女は発表しなかった。

事実、オバマ政権はこれらの声明を通して中国の最初の侵略の兆候があったとしても、日本を放棄しないことを日本の政策エリートたちに納得させることは何もしなかった。むしろ、日本の権威ある専門家が指摘した通り、シリアでオバマ政権が「赤線」を超えなかったことや、クリミア半島におけるロシアとウクライナへの介入をオバマ政権が嫌がったことは、日本政府にとってはオバマ政権は「骨なし」であるという確信を強めるだけだった。

いま、かつてのアメリカ政権の日本関連政策と(トランプ政権が)もっとも異なっているのは貿易関係だろう。オバマ政権は環太平洋連携協定(TPP)に関する交渉を完了させた。これは安倍政権が経済改革の公約を達成するためにかなりの努力を費やしてきたものだ。そして、トランプ政権による最も初期の行動はTPPのプラグを引っこ抜くことで、安倍政権がかなりの政治的なリソースを費やしてきた動きを背後から傷つけることだった。

本物か偽物かは分からないが、首相が支払った高いコストにも関わらずトランプ大統領と安倍首相の友情は驚異的な回復力を誇った。この関係の真の試練は、今後の二国間貿易協定になる。最近の米中貿易交渉の崩壊は、トランプ大統領は象徴的な合意では満足せず、彼が望んでいる譲歩を引き出せない限りは貿易戦争が激化するリスクがあることを示している。

日米貿易交渉がこじれ、トランプ大統領が日本の自動車に第232条関税を課すのであれば、彼はまさに日本経済の生命線を脅かしていることになる。そしてもしトランプ大統領が東京から譲歩を引き出すための交渉材料として二国間同盟を使うのであれば、日本の安全保障上の利益はかなり妥協されてしまうかもしれない。そのような暗いシナリオは考えられないわけでもなさそうだ。そしてそれこそが、この大統領政権の固有のリスクを物語っている。

さて、真に厄介なのは誰だろうか?

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