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10兆円企業が2週間で崩壊する大災害のレシピとは?映画「エンロン」

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不正に不正を重ね、悪徳企業の代名詞にもなったエンロン

皆さんはエンロン事件をご存知でしょうか?
1990年代にアメリカで最も革新的な企業として登場し、最盛期(2000年)には売上およそ10兆円。従業員は2万人。賞賛を浴び続けたエネルギー企業が2001年12月にわずか2週間余りで倒産した事件です。
原因は不正会計や粉飾決算にありました。その不正額はなんと3-4兆円。アメリカでのこの事件の衝撃は大きく、様々な法改正までもが行われ、現在でも関係者の語り草となっています。

このエンロンが市場に現れてからわずか2週間余りで崩壊するまでを描いたドキュメンタリー映画「エンロン The smartest guys in the room」から、なぜ巨大企業がわずか数週間でスキャンダルに巻き込まれ、崩壊したのかをご紹介します。

そもそもエンロンとは

エンロンは1985年にケネス・レイという人物によってアメリカ・テキサス州で創業しました。創業直後はテキサス州の石油産業のパイプラインを買収することによって利益を上げる会社だったようです。
その後、エネルギー自由化の波を受けてエネルギーの卸売市場に参入。当時は電力会社から電力を安く買い取り、高く売る「卸」という概念が電力市場には存在していなかったため、この考え方は極めて革新的でした。
さらにこれをコンピューターでオンライン取引をするシステムを立ち上げ、市場を圧倒するに至ります。1990年代の後半にはアメリカのエネルギー市場の王者として君臨し、独占的な地位を築いていました。

しかしその裏には不正会計や粉飾決算、重大なコンプライアンス違反、そして犯罪までも行いながら利益を上げ続ける姿がありました。その多様な手口や規模の大きさは、さながら現代の企業犯罪のショーケースです。
2006年に日本を揺るがしたライブドア事件の被害総額はおよそ50億円と呼ばれていますが、エンロンはそれをはるかに上回る驚きの3-4兆円とも言われています。
そしてこれらの不正がマスコミによって暴かれたのちに、わずか2週間あまりでエンロンは倒産。創業からわずか15年後の2001年のことでした。

エンロンでは何が行われていたのでしょうか?

過度なマッチョイズムに陥ったマネジメント層

もともとエンロン社の経営陣や幹部は極めてお金に対する執着心が強く、過激なマッチョイズムに陥っていたことが一因だと言われています。

エンロン社の創業者であり会長兼CEOでもあるケネス・レイという人物は、関係者のインタビューではお金に対する執着が人一倍強い人物であることが伺えます。テキサス州の貧しく、宗教に厳格な家庭に生まれた彼は、トレーラーの運転手から大学に通って経済学の博士号を取り、エネルギー市場の自由化を訴え、それを利用してエンロンを立ち上げた人物です。その当時を知る人物いわく、常にお金と利益にこだわり、コンプライアンスを守ると言う意識はほとんどなかったとこと。
高額な役員報酬にこだわり、投資をする銀行や投資家は愚かなカモだと断言していました。さらに会社として利益が上がるのであれば、犯罪まがいの手法であっても容認したと言われています。

当然このような人物の周りには、似たような人々が集まります。CFOのジェフ・スキリングは、さらに過激な言葉遣いを好み、社会進化論の熱心な信奉者でした。社会進化論とは「社会も自然界と同じように優れたエリートたちによって、劣ったグループや社会は淘汰されるべき」という考え方です。
これを信奉するスキリングは、優れたエリートが社会から莫大な投資を受けるのは当然として、犯罪まがいの会計や投資を積極的に主導したのです。かくして生まれたのは、法律の抜け穴を巧みに利用した粉飾決算や会計手法でした。
関係者からは法律スレスレの手法を駆使することでそこにスリルを見出す人物だったと推測されています。またプライベートでもエクストリームな状況を好む人だったと言われており「命を危険な状況にさらすことで生きている感覚が味わえる」という考えを持っていました。冒険旅行によく行っては、あえて危険な状況下での登山やバイクを好み、車が横転して死にかけたこともあったと言われています。

他にもエネルギー・サービス部門長のルー・パイ氏は「金とストリップ」にしか興味がない人物だったと言われています。会社の経費でストリッパーをオフィスに連れ込むこともあったそうです。毎晩部下とストリップに行き、もちろんその経費もすべて会社が負担していたとか。
「マネジメント層には過激なマッチョイズムが蔓延していた」と複数人のインタビューでは語られています。

攻撃的すぎる組織風土

マネジメント層がこのような過激な人々によって占められていたため、従業員も次第に過激な考えにとらわれるようになったとされています。
例えばエンロン社におけるボーナスは基本的に自社株でした。これが何を意味するのかと言うと、株価が上げれば自分も儲かるということです。しかもこのボーナスは数億円にもなることがありました。そのため従業員は株価を上昇させるために犯罪まがいの手法を含む、ありとあらゆる行動をとることになります。そしてエンロンはそれを会社として推奨していました。

人事制度も攻撃的そのものです。売上に貢献しない従業員を常に一定数自動的にクビにする制度が存在していました。従業員の売り上げを序列化し、下から15%を常にクビにしていたのです。

このような組織風土の結果出来上がった職場にモラルなど存在しませんでした。特に売上を求められるトレーダーは攻撃的だったと言われており、様々な悪辣な手法が今では明らかになっています。

  • 電力価格をわざと高騰させて停電させ、それを小出しに売り出してボロ儲けする。
  • 停電し困っている高齢者に皮肉を言いあって楽しむ。
  • 電力網にダメージを与え、電力価格が高騰する山火事は大歓迎。ニュースに大喜びする。

こういったトレーダーたちの行動を裏付ける電話は全て録音されており、ドキュメンタリー映画の中で聞くことができます。

株価偏重主義

前述の通り、エンロンにおける報酬は基本的に株。当然経営陣も同様です(いわゆるストック・オプション)。そのため経営陣も株価を上昇させるためにあらゆる行動を取りました。エンロンが株価上昇のための最も手軽な手段である粉飾決算に手を染めたのは、このストック・オプションが原因だったと言われています。
また上場以降は本社オフィスのいたるところにリアルタイムで株価を表示するディスプレイが設置され、経営陣から従業員に至るまで株価の上昇を強く意識した業務が求められていたのです。

経営陣が株価を意識せざるを得ない理由は他にもありました。
銀行からの融資に、自社の株価を用いたスキームが用いられていたのです。これは自社株をエンロンが発行し、それを銀行に担保として預け入れる代わりに銀行は現金を貸し出す。そのエンロンの株価が期日までに一定の価格に達せば、銀行はエンロン株から融資額以上の含み益が出る…という仕組みです。
つまりエンロンは銀行から融資を引き受け、担保を差し押さえられないために株価を上昇させ続ける必要がありました。さもなければ融資を引き上げられ、運転資金が不足してしまうためです。
このためエンロンは積極的に不正会計・粉飾決算に手を染めることになります。

時価会計主義と度重なる違法な取引

株価を上昇させ報酬を少しでも増やす、また融資を繋ぎ止めるために、様々な粉飾決算の方法が考案されました。最も代表的なものが時価会計主義と言われるものです。前述のCFO、ジェフ・スキリングが考案したとされています。

これは利益として買収した資産から生み出されるはずの利益をすべて、将来分まで計上するというものです。
例えば、毎月10億円の利益を生むビジネスを買収したとします。この時手元に資金として存在するのはそれまでに生み出された利益だけですが、エンロンではこれから生み出される将来の毎月10億円分も全て利益として財務諸表に掲載するとんでもない手法をとっていました。この例では毎月10億円分の利益が生み出されるので、5年分を計上したとすると60ヶ月分、すなわち600億円を買収しただけで利益として計上することになります。

そもそもこの考え方は当時の基準からしてもおかしいのですが、1990年代には会計法上の抜け穴とも呼べるもので、完全に違法だとは言い切れない部分があったのです(限りなく黒に近いグレー)。それを利用し、エンロンはとんでもない額の利益を会計上生み出したように見せかけていました。

また、一般的な粉飾会計もお手の物。
子会社に対する赤字の付け替え・飛ばしに始まり、循環取引、インサイダー取引、投資組合への出資を通じた利益相反まで手を染めています。
エンロンの資本関係は複雑怪奇そのものであり、ごく一部の関係者以外誰も把握できていなかったのです。
こういった複雑すぎる関係こそが不正の隠れ蓑でした。

関係機関との癒着

これだけやりたい放題をして、監査役や会計事務所はなぜ黙認していたのでしょうか?

実はエンロン社は会計事務所や監査役には巨額の報酬をちらつかせ、黙らせていたのです。
会計事務所であるアーサー・アンダーセンには、毎週数億円にも及ぶ会計監査料が振り込まれていたと言われています。また、アーサー・アンダーセンは当時のアメリカ五大会計事務所の一角として高い評価を集めていたので、その会計が疑われる事はほとんどありませんでした(ちなみにエンロン倒産後、その煽りを受けてアーサー・アンダーセンも倒産します。倒産前に独立し、かろうじて被害を免れたコンサルティング部門が現在のアクセンチュアです)。

では融資をしてくれる銀行にはどうしたのでしょうか?
これもエンロンから巨額の紹介案件をちらつかせることで融資元の銀行内の否定派を排除していきました。現にエンロンに対して否定的な態度を取ったためにクビにされたと言うアナリストたちが何人も存在しています。

さらに癒着は政界にまで及びます。
故郷がケネス・レイと同じテキサス州だったブッシュ政権には巨額の献金を繰り返しました。代わりにブッシュ政権は多額の政府資金や援助をエンロンが受け取れるように手配したと言われています。さらに当時の上院議会の半分以上が何らかの形でエンロンからの支援を受け取っていました。これらのロビー活動の結果、エンロンはエネルギー自由化という政治的なトレンドを作り出し、自らのビジネスを有利に進めていきます。京都議定書からのアメリカの離脱もエンロンの影響という指摘もあるほどです。

徹底的に関係者と癒着し、邪魔者は排除する姿勢をとったことでエンロン社は独占的な地位をエネルギー市場で築いていきました。

収益源はブラックボックス化

これらの様々な活動の結果、エンロンの収支は誰にも把握できなくなっていきました。特に外部の投資家に向けて公表するものは偽造・捏造・不正会計を重ねたものだったため、株式市場ではエンロンの収益源は「ブラックボックス」と呼ばれていました。しかし株式市場でも株価が上昇し続けることを歓迎していたため、この詳しいカラクリに深く突っ込んで知ろうとする者は多くなかったのです。

エンロンからは厳密な賃借対照表は公開されていませんでした。さらに公表したとしても「当社の資産を正しく評価できるものではない」として、公表を拒んでいました。
マスコミ、特に経済メディアはエンロンの株価が割高であるとして睨んでいましたが、エンロンはあの手この手の弁論術を駆使して逃げ回っていました。当時取材した記者は、幹部に対して収益源について質問したところ、曖昧な回答しか返ってこなかったと語っています。それでも取材を求めて粘り続けたところ、最終的にはエンロンが用意したとある密室に呼び出されたそうです。そこでは3時間以上に渡って中身がなく抽象的な会計についての説明を延々と受け、その内容は記者は全く理解できなかったと証言しています。

株価に陰りが見えて一挙に崩壊


このような悪辣な手法を繰り返した結果として株価は上がり続けましたが、事実上の自転車操業状態でした。

1999年後半頃からは資金が足りなくなり、経営陣も異動が多くなりました。最終的には資金がショートし、金策に走りますが間に合いません。
そしてウォール・ストリート・ジャーナル紙から倒産間近という報道が出た後は、株価も崩壊。最終的には株も融資も引き上げられ、エンロンは倒産します。
なおこの倒産劇の間にも、経営幹部たちは従業員には株を買うように推奨する一方で、自分たちは株を売り続けました(売り抜け=インサイダー取引)。最終的には数十億円もの利益を確保したとされています。

この倒産を受けて損失を被ったのはエンロンの関係者だけに留まりません。かつてのエンロンは株価が上がり続ける優良企業として、多くの年金運用ファンドからの投資を受けていました。これが株価の崩壊により、一挙に崩れ去ります。
現在の調査でも正確な数は把握できていませんが、エンロンの倒産により数十万人-数百万人の年金が失われたとされています。その一方で、エンロンの元経営陣たちは売り抜けにより巨額の利益を手に入れています。この行為により、エンロンは多くのアメリカ国民による憎悪を一手に引き受けることになりました。

なお、後にこれらの行為は有罪になり、幹部たちには法の裁きが下されました。また会長であるケネス・レイも2006年に心臓発作によってひっそりとこの世を去ったのです。

エンロン事件のまとめ

エンロンは売上は10兆円にも達していたとされる大企業でしたが、その実は犯罪のような手法で作り上げられた砂上の楼閣でした。そして砂の塔にふさわしく、わずか数週間で崩壊してしまったのです。
この後アメリカでは法改正が行われ、エンロンが用いていた会計上の抜け穴はほぼなくなり、現在ではすべて違法になっています。
また証券等監視委員会がこういった手法を悪用している企業がないかを現在でも監視しており、エンロンと同じ手法で不正な利益を積み上げることはできなくなっています。

映画「エンロン」ではこのような大企業の倒産劇が全てノンフィクションのインタビュー映像と当時の映像を組み合わせて紹介されています。
この記事を読んで気になった方はぜひ映画をご覧になることをお勧めします!

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